蔵前はかつての玩具問屋街が、東京のクラフトの街として生まれ変わった一角だ。チョコレートの焙煎所、ノートのアトリエ、真剣にコーヒーと向き合う店。だがこの街の食の要は、そうした職人たちよりも古い。すぎ田は1977年に雷門近くで創業し、1991年からこの地に腰を据えてきた。二代目の主人・佐藤光朗が、磨き込まれた銅鍋二丁で豚肉を揚げる — 強火で衣を締め、弱火で中心をじっくり火入れし、再び強火で「油を油で切る」。ミシュランのビブグルマンにはおよそ十年連続で掲載され、東京のとんかつ愛好家たちは、この店を街の定番の一軒に数えている。
佐藤は父が開いたこの店で育ち、学生時代から仕込みを手伝い、2011年に鍋の前に立った。受け継いだ品書きは頑ななまでに短い — とんかつ、豚肉ソテー、エビフライ、オムレツ、サラダ。五十年を五皿に注いできた店に、六皿目で証明すべきことなど何もないのだ。
ひとつ、名前について断っておきたい。検索でこの店にたどり着く人の半分がつまずくのだが、ここは鮨の「すぎた」ではない。予約困難で名高い同名の鮨店は日本橋蛎殻町にある、まったく別の店だ — もしその巡礼を計画しているなら、鮨すぎたの予約ガイドから始めてほしい。このページで語るのはとんかつのすぎ田。入りやすく、そしてその道においては同じだけ崇められている一軒である。
味わうもの
薄く、砕けるような衣をまとったロース(肩ロース)かつ。パン粉は近所にあるペリカン — 1942年創業のカルト的な名パン屋 — のもの。豚肉は信頼する千葉の農家から目利きで選び、流行りの厚切りではなく、あえて昔ながらの厚みに仕立てる。まずは塩で、と主人はすすめる。次に醤油、そしてソース。常連の秘密は豚肉ソテーだ。ブランデーとウイスキーでフランベした一皿で、これを目当てに街を横断してくる者もいる。味噌汁とご飯は別注文 — 本格的なとんかつ屋の流儀である。
訪れ方
この一覧の中では珍しく、「ただ店の前に立つ」ことが正攻法として通用する店だ。昼の20席は行列順。11時30分の開店前に着けばほぼ確実に一巡目で座れるが、正午に着けば一回転待つことになる。夜は落ち着いていて電話予約ができる。リズムを覚えておこう — 木曜と不定休が休み、ラストオーダーは昼13時45分、夜20時15分。これほどの老舗には珍しく、カード・電子マネー・QR決済がすべて使え、サービス料もない。払うのはかつの代金、それだけである。
のれんの視点
「近所のとんかつ屋です」と主人は言う。「でも、ごちそうと呼ばれたい」。この一言に蔵前という街が凝縮されている。この店を軸に、王道の午後を組み立てよう。隅田川沿いのコーヒー店や革製品の店を巡り、カウンターで銅鍋を眺めながらかつを味わい、そして川上へ十五分ほど歩けば、提灯に灯がともる頃の浅草寺にたどり着く。うまく時間を組めば、この店の衣の源であるペリカンにも立ち寄れる — ただしパンは昼過ぎに売り切れるのが常だ。街の素材と食卓がこれほど美しくつながる東京の午後は、そう多くない。
こんな方へ
日本の日常の食が、完璧に仕上げられたとき、その儀礼をも凌駕しうる — そう感じている方へ。蔵前の工房を目当てに訪れる、デザイン感度の高い旅人にもふさわしい一軒だ。



