コースとしての焼き鳥は、この店で確立された。伊勢廣は1921年、鶏肉店として 始まり、創業者の妻が四席のカウンターで常連客のために串を焼き始めた。それから 一世紀、星野家の三代目は毎朝一羽まるごとの雌鶏を捌き、十二の演目からなる流れ として供する — わさびを添えたささみ、戦後の再開以来絶やさず継ぎ足してきたタレ のレバー、砂肝、この店が生み出した腿肉のねぎまき、技だけで結び上げた(一つ ひとつ前の一つと二グラムと違わぬ)つくね、そして締めの鶏スープ。仕入れ先は 百年間一度も変えていない、と一家は語る。
のれんの視点
東京の名だたる焼き鳥のカウンターは、電話予約の抽選を勝ち抜いてようやく ¥20,000の一席にありつける。伊勢廣が差し出すのは、その形式の原点だ — 自らの 煙を逃がすよう設計された建物のなかで、備長炭で焼き上げる — しかもその半額、 新幹線のホームから2ブロックの場所で。このコレクションのなかで、旅の初夜に 選ぶべき最良の一軒である。
ふらりと入れるランチ
昼の名物・焼き鳥丼は予約を一切受けない。並ぶのだ。しかもその行列は正午前から 始まる。東京屈指の焼き鳥店に足を踏み入れる、いちばん手頃な方法であり、伊勢廣 のなかで唯一、こちらに求めるものが時間厳守だけという一面だ。
こんな方に
到着・出発の折に(東京駅からの近さは、いっそ反則級だ)、アーティゾン美術館 を出た鑑賞客に、そして焼き鳥を酒の肴ではなく料理として、一羽の鶏から順を 追って味わい尽くしたいすべての人に。



