木造三階建ての建物は、かつて下町東京の空を彩る風景でした。しかし 1923年の大震災と戦争が、そのほとんどを消し去りました。はん亭は、 そうした数少ない生き残りの一棟に暖簾を掲げています。1917年築の 下駄商の店舗で、いまや国の登録有形文化財。1970年代、まずこの建物に 惚れ込み、そのなかで暮らすために店を生み出した一人の料理人によって 救われました。
いただくもの
品書きはありません。串揚げ — パン粉をまとい、四種の油を配合して ほとんど重さを感じさせないほど軽やかに揚げた串 — が6本ずつ運ばれて きます。海老と大葉、蓮根、季節の魚、和牛、それぞれに専用のたれが 添えられます。最初の12本を終えたら、あとはただ「続ける」か「止める」 と告げるだけ。ランチも同じ作法を、より短く、より手頃な値段で味わえ ます。ぜひ蔵席をご所望ください。隣接する1907年築の蔵のなかにある 座敷です。
暖簾の眼
はん亭は、私たちのコレクションへのもっとも穏やかな入り口です。英語 でのオンライン予約が可能で、お子様連れも歓迎、ディナーは¥6,600。 ここで本当に予約しているのは、この建築 — そして、この街そのものです。 根津は、いまも生きる古き東京の首府。神社のつつじのトンネル、谷中の 路地と墓地の桜、本郷の学生街の古書店。その散策の締めくくりを、この 店の二階で、行灯に灯がともるころに。
こんな方へ
来日一週目、儀式ばらずに情緒を味わいたい旅人、ご家族連れ、そして 建築を愛する方へ。ここは、保存活動家たちが指し示すその建物のなかで いただく晩餐です。



