たこ梅は自らを日本最古のおでん屋と称し、その言葉には記録の裏付けがある。弘化元年(1844年)、岡田梅次郎が道頓堀に創業し、以来五代にわたって家族がその鍋を守り続けてきた。屋号は、創業者が働いた「たこ」と呼ばれるカウンター形式と、梅次郎その人の「梅」を継ぎ合わせたものだ。腰を下ろす前に、土地の言葉をひとつ。大阪では、おでんは「関東煮(かんとだき)」——関東風の煮込みという意味の名で呼ばれる。東から伝わり、この街のものとして育った料理である。
味わうもの
この店を支えるものは二つ。ひとつは創業の年から品書きに載る「たこ甘露煮」。蛸を甘いたれでゆっくりと、艶やかで柔らかくなるまで炊き上げたものだ。もうひとつは関東煮そのもの——醤油より濃く、まるいたまりの香る出汁の中で、それぞれの種が色を纏うまで浸かっている。そして創業者の名を今に伝える第三の一品が「さえずり」、鯨の舌である。これを初めて関東煮の種にしたのは初代だと店の歴史は記す。昔ながらの流儀で、一切れずつ、体温より少し高く温めた「上燗」を合間に含みながら——この店はいまも何よりまず「上燗屋」を名乗っている。
カウンターの実際
道頓堀の本店はカウンター15席とテーブル1卓、夜のみの営業で16:00〜22:50(L.O. 22:30)、休みは12月31日〜1月3日だけだ。席にはお通し料¥275と2時間制がつき、店は偶然迷い込んだのではない客で早くから埋まる。ここで役に立つ事実をひとつ。この規模のカウンターには珍しく、たこ梅は予約を受け付けている——電話で、日本語で。当デスクには一分の電話であり、多くの旅行者は知らないまま川沿いに並んでいる。
こんな方は、ぜひ腰を下ろして
大阪の一夜を、豪奢な何かに向き合うのではなく、19世紀から続くカウンターで一品ずつ、温めた一杯ずつ過ごしたい方へ。



