鮨人の原点は富山の「鮨し人」——木村大将がミシュランガイド初の北陸版で一つ星を獲得したカウンターである。その系譜を金沢・片町に運んだのが、この「はなれ」だ。片町は浅野川の花街とは川を隔てたコンパクトな夜の街。そして店の構え自体が、この家の考え方を物語る。入口を入るとまずグループの立ち喰い鮨「人人」があり、その奥に八席のカウンターがひっそりと控える。表はカジュアルに、奥では木村流のフルコースを。
味わい
おまかせ——品書きはなく、日本海が寄越すものに歩調を合わせて進む。この海岸線の強みは詩情ではなく熱力学にある。冷たい海水は魚に脂を蓄えさせるから、北陸の冬の魚は、揚がった時点ですでに内側から味が乗っている。富山湾の半透明の白海老をひと山、口の中でほどける一貫に。喉黒——赤い深海の魚——は脂が表面に珠を結ぶ寸前まで炙り、寒鰤は一年の頂点にある冬の鰤を。木村流は一貫ごとに意図を持って手を加える——温度、香り、魚ごとにひとつの調整——素のままでは出さない。予算はディナーでおよそ3〜4万円(飲み物別)、サービス料10%。
予約の実際
八席の帳面は、かなり先まで埋まる。席はOMAKASEや一休といった日本の予約サイトと電話で販売され、その姿勢は本気だ。キャンセル料は来店日のまる1か月前から発生し、最終週には100%に達する。この仕組みが気軽な予約をふるいにかけるからこそ、確定した席は確実に守られる。海外からの障壁は現実的なものだ——日本語のプラットフォームのアカウント、電話の場合は国内番号、そして食事制限やグループ貸切といった細かな相談を英語でできる窓口はない。日本語で、店自身のチャネルから予約するデスクなら、その溝を一本の連絡で埋められる。
こんな方へ
兼六園や近江町市場を目当てに、日本海が最も力を増す寒い季節に金沢を巡る方へ。富山にもう一日を足さずに、富山「鮨人」の流儀を味わいたい方へ。北の地物であることを何よりの身上とする魚を求めて、そして確定した日付は必ず守って。帳面を重んじる店は、客にも同じことを期待する。



