盛岡冷麺は、この街が誇る三大麺のひとつであり、その発祥はこの店にある。咸興に生まれた在日一世の青木輝人氏が、四つのテーブルとともに1954年5月、食道園を開いた。平壌の冷麺に、故郷・咸興の辛い冷麺を掛け合わせ、さらに麺そのものを作り替えた。蕎麦粉をやめ、白く歯ごたえのある一本へと仕立てたことで、盛岡冷麺は完成した。この店は焼肉も焼き、その評価も確かなものだ。食べログ3.66、そして「食べログ 百名店 焼肉 East 2025」に名を連ねている。
味わうもの
この店が生み出した冷麺は、透き通った冷たいスープに白く弾力のある麺を沈め、その奥に咸興の辛さを潜ませたもの。傍らには焼肉の炭火が添えられる。いまや街じゅうで作られる一皿の、その原型を、まさにそれが練り上げられた部屋でいただく。
カウンターに現金を
席に着く前に知っておきたいことがひとつ。この店は現金、それも現金のみを受け取る。カードも電子マネーもQRもない。ほぼキャッシュレスとなったこの国にあって、それはもはや一種の看板であり、店の佇まいそのものと響き合うささやかな矜持だ。ポケットに紙幣を忍ばせて訪れよう。四十席は、開店の時間とともにあっという間に埋まっていく。
こんな方に
盛岡冷麺を、その真の源で味わいたい旅人へ。そして、いまなお現金のみで営まれる店を厭わない、いや、むしろ楽しめる方へ。



