1850年代、日本が港を開いたとき、台所もまた開かれました。牛肉が日本の食卓に入ってきた地は、条約港・横浜です。明治元年にあたる1868年、初代・高橋音吉が浅い鉄鍋に厚切りの牛肉と味噌を合わせて煮たとき、牛鍋 — すき焼きに先立ち、その源流となった鍋 — がここに生まれました。太田なわのれんは歴史をテーマとして掲げる料理店ではありません。ここが歴史そのものであり、今なお商いを続け、今なお畳の間で卓上に鍋を仕立てています。
味わうもの
すき焼きで慣らされた紙のように薄い肉ではなく、厚い角切りの牛肉。それを黒く甘い味噌の割下 — 味付けを担う煮汁の素 — で、各部屋の鍋を自ら世話する着物姿の仲居が卓上で煮上げます。厚切りこそが要です。味噌が求める長い煮込みに、薄切りでは肉が硬くなるところを、角切りは耐え抜く。焼いた肉ではなく、煮込んだ肉として味わう牛肉です。コースはお造りと季節の小鉢から鍋へと積み上がり、締めは伝統に則ってご飯とともに。
予約の実情
店側は明快です。ウェブ予約は存在せず、唯一の扉は電話 — 日本語で、11:00から21:00のあいだに応対されます。計画の前に、この店独特の暦にご注意を。月曜と第1・第3・第5日曜が休み、平日は夜のみの営業で、昼があるのは土日祝だけ。二名様は相席の部屋になることがあり、四名以上なら庭を望むものもある個室の畳の間に — この違いは、店先ではなくその電話で確かめておく価値があります。日付も、部屋も、コースも、日本語の電話一本で決まる。その電話を、私たちのデスクがかけます。
こんな方へ
横浜で一日を組み立てるなら — 港町の古典的な散策、夕暮れの波止場、そして締めくくりに畳の間で二時間、日本に牛肉の食べ方を教えた一皿を、それが生まれた家で。東京旅行の「都会を離れる一日」に、この上なく美しく寄り添います。



