高平康司さんの父は、1976年に松山でこの店を開いた。どの町にもあった、家族で営む普通の町の鮨屋である。息子は銀座へ出て「鮨青木」で、続いて三つ星「鮨よしたけ」で修業を積み、2016年に愛媛へ戻り、2017年にカウンターを継いだ。それから8年後の2025年、ジャパンタイムズは「くるますし」をデスティネーション・レストランに選出した——四国の店としては史上初である。魚はほぼすべて愛媛産。その多くを、活け締め——釣り上げた瞬間に神経を締め、身の食感と透明感を保つ技——で知られる今治の漁師・藤本純一さんから直接仕入れている。
いただくもの
彼が自らを表す言葉は「黒子」。黒装束で舞台を支え、魚を輝かせるのが役目だという。この海の象徴である鯛は、二つの温度で二通りに。絹のようなマナガツオは、その柔らかさのためだけに研ぎ上げた刃で引く——包丁の鋼の種類ひとつで魚の味は変わる、というのが彼の持論だ。そして審査員が特筆した看板がこれ。骨を叩き切る通常の骨切りではなく、包丁の先で小骨を一本ずつ抜き取った鱧——ほかではまず出会えない食感である。シャリは米酢にほんの少しの赤酢を合わせ、砂糖は一切使わない。
予約の実際
カウンター8席、17:00と19:30の二回転制で、水曜と不定休が休み。予約は日本語の予約サイト「OMAKASE」のみで受け付けており、店の決まりも明確だ。キャンセル料は7日前から50%、3日前から100%。30分遅れると席は取り消し。香水は不可。来店は中学生以上。どれも意地悪ではなく、8席の店が生き残るための仕組みである。ただし読めない言語で乗りこなすには荷が重い——だからこそ、日本語で動くデスクの出番となる。カレンダーを見張り、細かな規定を確認し、道後温泉の湯上がりに合わせて夕食の時間を組む。
こんな方に
土地の名ではなく包丁で鮨を測る方へ。あるいは定番の松山の夜を求める方へ——建て替えられた道後温泉本館、丘の上の現存天守、そして瀬戸内の海を味へと変える八つの席。



