髙比良宏治さんは、松山にある父の町の鮨屋で米を研ぎながら育った。東京へ出て三つ星「鮨よしたけ」で五年を過ごし、26歳で故郷へ戻る。家業を継いでわずか一年で、日本中から客が飛行機で駆けつけるカウンターへと店を変え、そして2025年には四国の飲食店として初めてジャパンタイムズ・デスティネーション・レストランに選ばれた。魚はほぼ百パーセントが愛媛産——名高い今治の漁師から直に仕入れる活け締めの魚だ。
いただくもの
彼が自らを表す言葉は「黒子」。黒装束で舞台を支え、魚を輝かせるのが役目だという。二つの温度で供される二通りの鯛。二神島の雲丹と蒸し鮑。そして審査員に長文を書かせた看板——骨を叩き切る通常の骨切りではなく、包丁の先で一本ずつ抜き取った鱧。ほかではまず出会えない食感だ。シャリは米酢とほんのひとさじの赤酢で調え、砂糖は一切使わない。
のれんの視点
¥27,500で、一貫ごとの価値でいえば、日本でも屈指のコストパフォーマンスを誇る本格鮨のカウンター——東京の客は臆面もなく「銀座の半額」と口にする。定番の松山の夜の中心に据えたい。建て替えられた道後温泉本館(2024年に全面再開)、丘の上に建つ現存天守の松山城、そして瀬戸内の海を味へと変えた八つの席。
こんな方に
土地の名ではなく包丁で鮨を測る旅人へ——そして湯上がりに島で最高の夕食を求める温泉好きへ。



