2026年6月、ジャパンタイムズの「デスティネーション・レストラン」審査員団は、これまで一度もなかったことをしました。その年の最優秀店を全会一致で選んだのです。選ばれたのは京都でも東京でもありませんでした。日本一のサメの水揚げを誇る港・気仙沼の、一つのテーブルを囲む8席。ロビーの壁にいまも2011年の津波の到達高を示す赤い線が残る、あるホテルの中の店でした。
黒森洋司は、香港の広東料理の名門・福臨門の系譜で初めて日本人料理長を務めた人物です。2011年の震災が彼を北へと導きました。仙台の店で10年をかけて名を高め、2025年9月、港そのものへと移りました。本人いわく、99%の人は「ふかひれ」をひとつのものだと思っているとのこと。それが実は幾通りもあることを、彼は生涯をかけて示し続けてきました。
何を食べるのか
おまかせ——献立は厨房が決めます——は、4種のサメとヒレの9つの異なる部位を巡ります。胸、背、尾、そして珍重される繊維状の帯。それぞれをそのコラーゲンに合わせて戻し、火を入れます。なかには広東の慣習にあえて逆らう仕立てもあります。上のコースには、江戸期の日本がかつて広東へと送り出したのと同じ等級の三陸産干し鮑が加わります。店は誰もが抱く疑問に真正面から向き合い、自らのサイトで英語でこう答えています。気仙沼はサメを丸ごと(身、皮、ヒレ)水揚げしており、海上でヒレだけを切り取ることはしない、と。どの種を供し、どのように管理しているかも明らかにしています。彼らの説明を読み、ご自身の目で判断してください。
予約の現実
予約はオンラインのみ。英語ページのある予約サイト「OMAKASE」が毎月1日12:00に新しい月を公開し(2026年9月時点で12月末まで、約3か月先)、食べログのネット予約(日本語)もあります。電話予約はできず、支払いはカードのみで現金は使えません。一枚のテーブルに8席、夜は18:30の一斉スタート一回のみで、日によっては朝食(9:00)や昼(12:00)の回もあります。予約のある日だけ営業し、営業日は店のInstagramに掲示されます。つまり実務上の課題は、三陸で過ごすたった一夜を、店が実際に開く日に合わせることです。日本語のカレンダーを読み、席の公開を見張るデスクの出番はここにあります。8席が埋まる前に、列車と上階のホテルと席を揃えにいきます。
こんな人へ
フロンティアを求める人へ。一つの町を語り尽くす晩餐を、夜明けの魚市場(生鮮カツオの水揚げ日本一が30年近く続いています)と震災遺構の学校と組み合わせて。そして、どこかへ行く最良の理由は、知り合いの誰一人として行ったことがないことだ、と信じる旅人へ。



