食材を「仕入れる」店は多い。だが片折卓也は「通う」。一日300キロメートル以上を走り、生まれ故郷である氷見の夜明けの魚市へ、そして能登半島の突端・珠洲の松茸の競りへと向かい、金沢・浅野川沿いに改装した町家へ戻る。そこでは地元産の阿手材のカウンターに、八人の客が待っている。名高い料亭・つる幸で十一年、仙桃の料理長としてミシュランの星を獲得し、そして2018年、自らの名を暖簾に掲げた。そして今 — OADによる日本一のレストラン(2025年)、六年連続の食べログ ゴールド、そして国内でほとんど例を見ない4.68という評価。
味わうもの
おまかせは一種、約十一品。船と山が与えてくれたものを軸に、日々組み立て直される。その中心にあるのが出汁だ — 目の前で削られる鰹節、自ら汲んできた湧き水に四十時間浸した利尻昆布。愛好家たちがただ「命の出汁」と呼ぶ一椀。そのまわりに、朝獲れの氷見の魚、能登の鮑、その朝の競りで競り落とした珠洲の松茸、そして初冬には、十一月の金沢を最も過酷な予約シーズンにする蟹たち(香箱と加能)が並ぶ。
その地を包む風景
金沢は、江戸の姿をそのまま残す稀有な城下町だ。東と主計町の茶屋街はカウンターから徒歩五分、兼六園と21世紀美術館が一日を満たし、工芸(金箔、料理の下から現れる九谷焼)が土産袋を満たす。加賀温泉や和倉温泉での一泊を組み合わせれば、これぞ北陸二日間の決定版の旅程となる。
どんな人が足を運ぶのか
日本料理の頂そのものを追い求める食通たち。東京の名だたるカウンターが最前列だとすれば、この川辺の一室は源流 — 日本の料理人たち自身が語り合う、その部屋なのだ。



