かねよは1912年に寺町京極の商店街で開業し、以来この地に店を構え続け、レトロな店内をそのままに残しています。もっとも名高いのは「きんし丼」— 蒲焼にした鰻の上に、丼の縁からこぼれ落ちるほど大きなふんわりとした厚焼き玉子をのせた一杯で、ミシュランガイドには10年連続で掲載されています。
味わうもの
注文すべきはきんし丼です。タレを塗って焼き上げた鰻を、丼の縁を越えて垂れ下がるほど大きく柔らかな出汁巻き玉子で覆い尽くします。その華やかな見た目の下には、本格派の鰻屋の実力が息づいています — タレは開業以来ずっと注ぎ足し続けてきた同じ秘伝のもので、1912年へと通じる生きた一筋の糸なのです。
店とその伝説
京都で語り継がれる逸話があります。戦前、火の手が店に迫ったとき、主人は金庫ではなく創業以来のタレの壺を目がけて駆け、それを守り抜いたというのです。店内は当時からほとんど変わらず — 使い込まれた木材、古い調度品 — 二階の座敷では今も月に一度、落語の会が催されています。ここで食事をすることは、ついぞ近代化に呑み込まれることのなかった、この街の日常の一片の中に身を置くことにほかなりません。
こんな方へ
気取らず、今も生き続ける歴史がお好きな方へ — 繁華街のアーケードにたたずむ、たっぷりとした一世紀の丼と、傍らに添えられる上質な物語を。



