毎年7月、日本中が鰻を食べる土用の丑の日に、石ばしは休む。1910年の創業から四代続く一家は、この日を鰻の供養の日と呼ぶ。焼夷弾の空襲を生き延びた煉瓦塀の奥にあるこの店の流儀は、その一つの所作に尽きている。鰻は品書きの一項目ではなく、店の存在理由そのものであり、儀式をもって遇される。
供されるもの
鰻は席に着いた時ではなく、予約した時点で決まる。注文を受けてから割き、白焼きにし、脂が身に溶け込むまで小一時間かけて蒸し、創業以来継ぎ足してきたタレをまとわせて備長炭で焼き上げ、店が一世紀使い続けてきた輪島塗の重箱に納めて鰻重として供する。注文から膳まで約一時間 — と店の側から告げられる。その待ち時間こそが儀式である。利き酒師の資格を持つ女将が、まさにこの一時間のために酒を入れ替えながら供し、百年を超える糠床から出した漬物を添える。店の異端の主張は、ためらいなくこう言い切る — 鰻の本当の旬は夏ではなく冬だ、と。
予約の実際
日本語で応じる一本の電話と、一つの決まり — 厨房が生きた鰻から始める以上、鰻は予約の時点で決めておく。営業は火曜から土曜の昼と夜。日・月・祝、そして土用の丑の日は休み。3日前からのキャンセルは全額 — だからこそ予約の電話は正確でなければならない。等級、人数、時間。未就学児は入店できない。どれも意地悪ではない。一度割いた鰻を元に戻せない厨房の必然である。ただし、日本語で計画を立てられる人のための仕組みであることも確かで、電話をかけ、注文を確定し、確約の前にキャンセル条件まで説明する予約デスクが役に立つのは、まさにここだ。
こんな方へ
蒸しに費やすまるまる一時間が鰻の脂に何をもたらすか、確かめたい方。贅沢は緩やかに、あらかじめ決めて味わいたい方。そして「一年で最も鰻が売れる日に、敬意を込めて休む」という一文を読んだ瞬間に席を求めたくなった方 — 椿山荘の庭園と神楽坂の夜の間に挟む、長い昼食としてどうぞ。



