別府は日本一の湧出量を誇る温泉地。立ちのぼる湯けむり、「地獄」の池、砂湯の町です。 2021年、この町はかつて持たなかったものを手に入れました。目的地となる一軒のカウンターです。 廣門泰三は、大阪の三つ星「柏屋」での10年、そば打ちの名匠・髙橋邦弘のもとでの修業、 そして銀座の二つ星「篠原」で右腕を務めた4年を経て故郷へ戻り、 湾を見下ろす山あいに欅の8席をひらきました。
味わうもの
彼のこだわりは、みずから**「海からゼロ時間」**と呼ぶもの。 海水につけたまま市場から運ばれ、コースが始まる直前まで生きている魚を、 皿の文様が透けて見えるほど薄く引く — 東京では物理的に提供しえない食感です。 名物の鱧は、通常の骨切りで砕くのではなく小骨を一本ずつ抜き、 宮崎産キャビアを頂きにあしらいます。名匠のもとで過ごした一年に由来する手打ちそばがコースの中ほどに登場し、 秋には炭火で焼く猪や鹿が並びます。 食べログアワードのシルバーを2度、ゴ・エ・ミヨのトック3つ、 そして2025年のデスティネーションレストラン選出 — 開業から5年足らずでの快挙です。
その土地
このディナーは、日本を代表する温泉の旅程の要となります。 七つの「地獄」、19世紀から続く竹瓦温泉の砂湯、 大地がみずから素材を煮上げる鉄輪(かんなわ)の地獄蒸し工房、 そして明礬(みょうばん)の湯の花小屋。 アートと湖のリゾート地・湯布院は、山を越えて30分の距離です。
こんな方に
湯めぐりの合間に世界水準の一席を求める温泉客へ。 そして、料理人の家賃が銀座でないとき ¥28,500 で何が味わえるのかに興味を抱く割烹好きへ。



