笹森通彰は2003年、多くの料理人が口にするだけの信念を携えてイタリアから 帰郷した。イタリア料理の要が素材ならば、素材ごとつくればいい。それから 二十年余り、城下町・弘前の20席のオステリア(エノテカはワインの家の意)では、 自ら塩漬けする生ハム — イタリアの基準より塩を抑えた、彼自身の均衡の感覚 —、 ジャージー牛乳から引き上げるブッラータ、自家畑の野菜、そして岩木山の斜面に 広がる自家ヴィンヤードのワインが出る。2010年に醸造免許を取って以来、りんごの 国の北緯40度で、ピエモンテの偉大な品種ネッビオーロをマルヴァジーア、 シャルドネとともに育てている。
何を食べるか
およそ8皿のおまかせで、衝撃はその出自にある。生のイカと青森のウニを合わせた 冷製スパゲッティ。一枚残らず自家熟成のシャルキュトリーの盛り合わせ。流通を 一度も経ていないチーズ。地平線の火山を望む畑で育ったペアリングのワイン。 日本の調味料は信条として使わない — イタリアの味を濁したくない、と語って きた — その結果、逆説的に、日本で最も純度の高いイタリアンの一つになった。 コースは二本のみ。¥21,120か¥33,220、税・サービス料込みである。
予約の現実
20席、夜のみ、日曜と月2回の月曜が休み。予約帳は3ヶ月先まで開いており、 扉は二つ — オンラインのポケットコンシェルジュか、日本語の電話。子供連れや 貸切ランチは日本語のウェブフォームのみで受け付ける。キャンセル規定はこの コレクションで最も厳しい。3営業日前から50%、前日・当日は100%。まさに デスクが本領を発揮する形の予約である。日本語で確定し、細部を預かり、 新幹線の遅延が全額のノーショーにならないよう見届ける。
こんな方に
ワインを軸に旅する方、雪国でテロワールが何を意味するのか知りたい方、そして どのみち東北を巡る方に — 弘前には日本で最も写真に撮られる桜の堀を持つ城と、 白神山地のブナ原生林がある。ヴィンヤードと果樹園が同時に実る収穫期 (9〜10月)が、その窓だ。



