越前がには日本の雪ガニの中でも別格の存在――国内で唯一、皇室に献上されるかに――であり、その漁期は法律に刻まれている。雄がには11月6日から3月20日まで、それ以外は一切揚がらない。創業から百十余年、日本海の上に立ち続けてきた旅館・望洋楼は、この四か月半に冬のすべてを懸けて膳を組み立てる。館は東尋坊の断崖にほど近い三国港にあり、船が着く岸壁まで数分――この立地こそが、この宿の論理のすべてである。
供される料理
一杯のかにが、会席の中で三通りに供される。生のまま刺身として――脚の身は甘く、透き通るほど。茹でて――王道の読み解き。そして炭火で殻がふつふつと焦げるまで焼き上げて。厨房が受け入れるのは、越前の港で揚がった証である黄色いタグを付けたかにのみ。それも一キロを優に超え、競りで争奪される1.3〜1.4キロ級の重量級を選び抜く。店の主人は自ら三国の市場に足を運び、大きさと状態を秤にかけて一杯ずつ選ぶ――仕入れ業者の箱を信用したりはしない。かにの季節以外も厨房は通年の会席を営み、昼は¥7,000から、夜は¥12,000から。
予約の現実
2021年の全面改築以来、望洋楼は全七室。そのすべてが温泉風呂付きのスイートであり、冬の在庫はわずか七卓分しかない。11月6日の解禁から年末までの繁忙期が真っ先に埋まる。予約は日本語の電話で。オンラインシステムも同じく日本語のみ。最高級のかにプランはかにそのものの等級で値が決まるため、電話の中で「いくらまで出すか」も決めることになる。等級・予算・日程――その会話こそ、日本語を話す予約デスクがあなたに代わって行うための仕事である。
こんな方へ
予定表ではなく季節に合わせて旅を組める方へ。11月から3月のあいだに福井の海岸へ向かい、暦が法律で定められたかにを、それが揚がった海を見下ろす個室で味わうために。



