天ぷらは、確かな手にかかれば、衣というより「間(タイミング)」の芸である。そして志村剛生ほど、その間を確かに捉える手はそう多くない。静岡にある彼の八席のカウンターは、いまや衆目の一致するところ、日本随一の天ぷらの座敷となった。
味わうもの
魚が水揚げされるその場所から始まるおまかせ。志村はほぼ毎日、焼津の魚屋「サスエ前田魚店」の前田尚毅と向き合う — 東京の「NARISAWA」が信頼を寄せるのと同じ仕入れ先である。素材の源は駿河湾、国内でも屈指の深さと多様さを誇る漁場だ。一品一品がその素材ならではの流儀で扱われる — 乾かし、蒸し、揚げ、あるいは炙る。技を素材に合わせるのであって、その逆ではない。
カウンター
志村は2007年に成生を開き、2021年に現在の八席の檜(ひのき)カウンターへと移した。火の通り具合は目と音と香りで見極め、なじみのない魚は客の前に出す前に必ず前田と検(あらた)める。食べログGoldにしてTABELOGの天ぷらランキング頂点に位置する — だからこそ、席は瞬く間に消えてしまう。
予約について
完全予約制、受付は電話で日本語のみ。海外から確保するのが最も難しい天ぷらのカウンターのひとつである。座敷は小さく、供される時間は他に代えがたく、そして静岡まで足を運ぶこと自体が、この体験の一部なのだ。



